不倫相手が未成年者だった場合の法的問題

本記事は一般的な法律情報を提供するものであり、すべての事例に適用されるわけではありません。個別の状況によって判断は大きく異なりますので、具体的なケースについては必ず弁護士にご相談ください。
配偶者の不倫が発覚し、さらにその相手が未成年者だったと知ったとき、サレ妻・サレ夫が受けるショックは計り知れません。「まさか子どもと」「犯罪なのではないか」「どうやって慰謝料を請求すればいいのか」といった疑問と怒りが湧き上がってきます。未成年者との不倫は、通常の不倫とは異なる法的問題を多く含んでおり、民事上の慰謝料請求だけでなく、配偶者の刑事責任も問題となる可能性があります。本記事では、不倫相手が未成年者だった場合の法的な取り扱い、慰謝料請求の可否と方法、配偶者が負う刑事責任について詳しく解説します。
未成年者の定義と責任能力の問題

まず押さえておきたいのは、法律上の「未成年者」の定義です。2022年4月1日の民法改正により、成年年齢が20歳から18歳に引き下げられました。したがって、現在の法律では18歳未満が未成年者として扱われます。ただし、青少年保護育成条例などの刑事法の分野では、18歳未満を保護の対象としているため、不倫相手が18歳未満である場合には特別な注意が必要です。
未成年者に対して慰謝料を請求できるかどうかは、その未成年者に「責任能力」があるかどうかによって決まります。責任能力とは、自分の行為が法律上非難されるべきものであることを理解し、それに基づいて行動を制御できる能力のことです。民法712条は、「未成年者は、他人に損害を加えた場合において、自己の行為の責任を弁識するに足りる知能を備えていなかったときは、その行為について賠償の責任を負わない」と規定しています。
判例や実務では、責任能力は一般的に11歳から12歳程度で認められると考えられています。したがって、不倫相手が高校生や大学生など、ある程度の年齢に達している場合には、通常は責任能力があると認定される可能性が高いです。不倫という行為ができる年齢であれば、その行為が既婚者の配偶者を傷つける不法行為であることを理解できると考えられるためです。
したがって、不倫相手が未成年者であっても、その年齢が一定以上であれば、本人に対して慰謝料を請求することは法律上可能です。「未成年だから慰謝料を請求できない」と諦める必要はありません。ただし、後述するように、実際の回収可能性や手続き上の注意点など、成年者を相手とする場合とは異なる問題があります。
未成年者への慰謝料請求と親の責任
不倫相手が未成年者で責任能力がある場合、慰謝料の支払い義務を負うのは未成年者本人です。多くの方が「親が責任を取るべきではないか」と考えるかもしれませんが、法律上、責任能力のある未成年者が不法行為を行った場合、親には原則として法的な支払い義務は生じません。
民法714条は、責任能力のない未成年者が他人に損害を与えた場合に、その監督義務者である親が責任を負うことを定めていますが、これは責任能力がない場合の規定です。責任能力がある未成年者の場合、本人が責任を負うのが原則であり、親は法的には責任を負わないと解釈されています。
ただし、例外的に親が一般不法行為責任(民法709条)を負う可能性はあります。これは、親の監督義務違反自体が不法行為に該当する場合です。例えば、親が未成年の子どもの非行を知りながら放置していた、適切な教育や監督を怠っていたなど、親自身の行為に落ち度がある場合には、親に対しても慰謝料を請求できる可能性があります。しかし、この主張が認められるハードルは高く、単に「子どもが不倫をした」というだけでは親の責任を問うことは困難です。
現実的には、未成年者の親が自発的に慰謝料の支払いに応じてくれる場合もあります。親としては、自分の子どもが他人の家庭を壊す行為に加担したことに対して、道義的な責任を感じることもあるでしょう。また、示談を成立させる際には、未成年者本人だけでなく親の同意も必要となるため(後述)、その過程で親が支払いを申し出ることもあります。しかし、これはあくまで任意の支払いであり、法的に親に支払いを強制することは原則としてできません。
未成年者への慰謝料請求における実務上の問題点
未成年者に慰謝料を請求する場合、法律上は可能であっても、実務上は様々な困難が伴います。最も大きな問題は、支払い能力の欠如です。未成年者の多くは学生であり、定職に就いていないことがほとんどです。アルバイト程度の収入しかない場合、数十万円から数百万円にもなりうる慰謝料を一括で支払うことは事実上不可能です。
たとえ裁判で勝訴し、慰謝料の支払いを命じる判決を得たとしても、相手に財産や収入がなければ実際に回収することはできません。給料を差し押さえようにも、学生であればそもそも給料がありません。預金を差し押さえようにも、未成年者の銀行口座にまとまった金額が入っている可能性は低いでしょう。このように、法的には勝っても実質的には「勝訴貧乏」という結果になる可能性が高いのです。
また、未成年者との示談を成立させる際には、親権者の同意が必要となる点にも注意が必要です。民法5条は、未成年者が法律行為をする場合には親権者の同意を得なければならず、同意なく行った法律行為は取り消すことができると規定しています。示談も法律行為の一種ですので、未成年者本人とだけ示談を成立させても、後で親権者から取り消される可能性があります。
したがって、未成年者への慰謝料請求を進める場合には、最初から親権者を交渉の場に引き入れ、親権者の同意を得た上で示談書を作成する必要があります。実務上は、親権者に連絡を取り、「お子さんが不倫をしたことについて話し合いたい」と伝えることから始まります。親権者が協力的であれば交渉は比較的スムーズに進みますが、親権者が「うちの子に限ってそんなことはない」と否定したり、「まだ子どもなのだから許してほしい」と開き直ったりする場合もあり、交渉は難航する可能性があります。
配偶者が負う刑事責任の種類
不倫相手が未成年者である場合、配偶者は民事上の慰謝料を支払う責任を負うだけでなく、刑事上の責任を問われる可能性があります。これは、未成年者との性的関係が様々な法律で禁止されているためです。どのような刑事責任が問題となるかは、未成年者の年齢や関係性によって異なります。
まず、相手が16歳未満である場合、不同意性交等罪(刑法177条3項)が成立する可能性があります。この罪は、2023年の刑法改正で新設されたもので、16歳未満の者に対して性交等をした場合、相手の同意の有無にかかわらず処罰されます。つまり、たとえ相手が同意していたとしても、16歳未満であれば犯罪となるのです。この罪が成立すると、5年以上の有期懲役という重い刑罰が科される可能性があります。
相手が16歳以上18歳未満である場合、青少年保護育成条例違反が問題となります。各都道府県が定める青少年保護育成条例は、18歳未満の青少年に対する「淫行」を禁止しています。淫行とは、単に自己の性欲を満たすために青少年と性的関係を持つことを指します。既婚者が未成年者と不倫関係にある場合、通常はこの淫行に該当すると考えられます。条例違反の場合、都道府県によって罰則は異なりますが、一般的には2年以下の懲役または100万円以下の罰金が科される可能性があります。
ただし、真剣な交際であると認められる場合には、例外的に淫行に該当しないと判断されることもあります。しかし、配偶者がいる既婚者が未成年者と真剣に交際していたと主張しても、その主張が認められる可能性は極めて低いと考えられます。既婚者である以上、未成年者との関係は真剣な交際ではなく、単なる遊びや性欲の充足と評価される可能性が高いためです。
さらに、児童買春・児童ポルノ禁止法違反や児童福祉法違反が成立する可能性もあります。相手が18歳未満で、金銭その他の対償を供与して性交等をした場合には児童買春罪が成立します。また、児童福祉法34条1項6号は、児童に淫行をさせる行為を禁止しており、これに違反すると10年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金、またはその両方が科される可能性があります。
刑事告訴や警察への通報を検討すべきケース
配偶者が未成年者と不倫していた場合、サレ妻・サレ夫としては、察への通報を検討すべきかどうか悩むところです。通報することで配偶者が逮捕され、刑事罰を受ける可能性がありますが、それは同時に家族にも大きな影響を及ぼします。配偶者が逮捕されれば職を失う可能性があり、経済的な基盤が崩れるかもしれません。また、子どもがいる場合には、子どもに与える精神的影響も考慮しなければなりません。
通報を検討すべきケースとしては、まず相手が極めて幼い場合が挙げられます。16歳未満、特に中学生以下の未成年者が相手だった場合、これは明らかに犯罪行為であり、社会的にも許されるものではありません。このような場合には、配偶者を厳しく罰することで、二度と同じ過ちを繰り返させないという意味でも、通報を検討する価値があります。
また、配偶者が全く反省していない場合や、むしろ開き直っている場合にも、通報が有効な手段となりえます。民事上の慰謝料請求だけでは配偶者が事の重大性を理解せず、再び同じことを繰り返す可能性があるためです。通報によって捜査が開始され、取り調べを受けることで、ようやく自分の行為の重大性を認識することもあります。
一方で、配偶者が深く反省しており、夫婦関係をやり直したいと考えている場合には、通報をしないという選択もあります。、いったん通報すれば取り下げることが困難であり、配偶者の人生に取り返しのつかない影響を与える可能性があります。夫婦関係を継続し、家庭を守りたいのであれば、民事上の慰謝料請求にとどめ、通報は選択しないという判断もありえます。
なお、通報するか否かを直接に交渉材料にすることは配偶者に対する脅迫となって、これ自体不法行為になったり刑法上の脅迫罪が成立することもあり得ますから、絶対にやめてください。
未成年者への慰謝料請求における金額の相場

サル妻、サレ夫から未成年者に対する慰謝料請求が認められる場合、金額はどの程度になるのでしょうか。裁判例では様々な金額が認められていますが、一般的には成年者を相手とする場合よりも低額になる傾向があります。これは、未成年者であることが減額要素として考慮されるためです。未成年者は社会経験が乏しく、既婚者であることの意味や不倫の重大性を十分に理解していない可能性があるため、責任の程度が相対的に軽いと評価されることがあります。未成年者が不倫相手だった場合、「未成年であること」も考慮され、慰謝料の額が低くなることが考えられます。
ただし、未成年者であっても、その行為の悪質性が高い場合には高額の慰謝料が認められる可能性もあります。例えば、未成年者の側から積極的に既婚者を誘惑した場合、既婚者であることを知りながら長期間にわたって関係を続けた場合、妊娠や中絶に至った場合などは、増額要素として考慮される可能性があります。
特に中絶の場合、被害者の受けた苦痛やその後の苦労の大きさなどに鑑み慰謝料が高額になる可能性は否定できないでしょう。
証拠収集と請求手続きの進め方
未成年者への慰謝料請求を進める際には、まず不倫の事実を証明する証拠を収集する必要があります。証拠としては、LINEやメールのやり取り、ラブホテルへの出入りを撮影した写真や動画、探偵による調査報告書などが有効です。特に未成年者の場合、SNSを頻繁に利用していることが多いため、SNS上でのやり取りが重要な証拠となることもあります。
証拠を収集したら、まずは内容証明郵便で慰謝料を請求します。この際、未成年者本人だけでなく、親権者にも同じ内容の通知を送ることが望ましいです。親権者に事実を知らせることで、親権者が示談交渉に応じる可能性が高まります。内容証明には、不倫の事実、慰謝料の金額、支払期限、支払方法などを明記します。
相手が交渉に応じない場合や、提示する金額に大きな開きがある場合には、裁判所での手続きに移行します。最初から訴訟にすることもできますが、まず民事調停を申し立て、調停委員を介して話し合いを行う方法もあります。調停でも合意に至らない場合には、最終的に訴訟を提起し、裁判で判断してもらうことになります。
未成年者を相手とする訴訟では、未成年者は法定代理人である親権者を通じて訴訟を遂行することになります。したがって、実質的には親権者との交渉・訴訟となります。親権者が弁護士を立てて本格的に争ってくる可能性もあるため、こちらも弁護士に依頼することが望ましいです。
また、事案が相当に悪質で配偶者の刑事責任を追及する場合には、警察に通報したり告発したりすることも考えられます。。ただし、刑事事件は基本的に被害者である未成年者やその親が告訴するものであり、配偶者であるサレ妻・サレ夫が直接告訴することはできません。しかし、警察に情報提供をすることで、警察が捜査を開始する可能性はあります。
弁護士への相談の重要性
不倫相手が未成年者だった場合、通常の不倫以上に法的問題が複雑になります。民事上の慰謝料請求に加えて、配偶者の刑事責任、親権者との交渉、未成年者の責任能力の判断など、専門的な法律知識が必要となる場面が多くあります。また、感情的になりやすい状況であるからこそ、冷静な判断と適切な対応が求められます。
弁護士に相談することで、個々の事情に応じた最適な対応策を提案してもらうことができます。慰謝料請求が認められる可能性、予想される金額、警察への通報等をすべきかどうか、親権者とどのように交渉すべきかなど、具体的なアドバイスを受けることができます。また、弁護士が代理人として交渉や訴訟を行うことで、精神的な負担を軽減することもできます。
特に事案が悪質で、配偶者の行為を警察に通報するかどうか迷うような刑場合には、早期に弁護士に相談することが重要です。通報をするかどうかの判断は、家族の将来に大きな影響を与えるため、慎重に検討する必要があります。弁護士であれば、通報した場合のメリット・デメリット、通報した場合の流れ、配偶者が受ける可能性のある刑罰などについて詳しく説明してくれます。
配偶者の不倫、しかも相手が未成年者だったという事実は、精神的に大きなショックです。一人で悩まず、できるだけ早く専門家のサポートを受けることで、適切な解決への道が開けます。
弁護士佐々木一夫の視点
配偶者の不倫相手が未成年者だった場合、その精神的ショックは通常の不倫問題とは比べ物になりません。「相手はまだ子どもなのに」「犯罪ではないか」と、怒りと混乱が入り交じるのは当然のことです。
しかし、法律実務の観点から申し上げますと、未成年者への慰謝料請求は「法律上は可能」であっても、「現実の回収」には極めて高いハードルが存在します。最大の壁は「支払い能力の欠如」と「親権者の介入」です。学生や未成年のアルバイト収入では数十万円の慰謝料を一括で支払うことは困難であり、合意に至っても分割払いが途絶えるケースが後を絶ちません。
また、未成年者との示談は親権者の同意がなければ後から取り消されてしまうため、必ず相手の親を交渉のテーブルに着かせる必要があります。「うちの子が騙された被害者だ」「既婚者だと知らなかったはずだ」と相手の親が猛反発し、逆にあなたの配偶者を刑事告訴や通報する、あるいは逆に未成年者に対する不同意性交等で損害賠償を請求してくるといった泥沼の争いに発展するリスクも十分に考えられます。
感情のままに相手の未成年者へ直接連絡を取ったり、職場や学校に乗り込んだりすると、かえってあなた自身が脅迫や名誉毀損に問われる恐れもあります。ご自身の家庭を守り、安全かつ確実な解決を図るためには、絶対に当事者同士で解決しようとせず、速やかに弁護士にご相談ください。
弁護士佐々木一夫弁護士により監修された
弁護士法人アクロピース

